『献上加賀棒茶』ヒストリー

今や石川県を代表するお茶として、観光客に大人気の『献上加賀棒茶』。
加賀の地で150年以上にわたり茶業を営む『丸八製茶場』の代表取締役・丸谷誠慶さんに、会社の成り立ちから『献上加賀棒茶』が生まれるまでの歴史をお話しいただきました。

製茶奨励政策から始まったお茶作り


丸八製茶場の創業は1863年(文久3年)、江戸末期になります。
江戸時代の加賀藩・前田家は非常に裕福で、幕府からするとかなり厄介な存在だったそう。
そのため、目をつけられないためにはどうしたらよいかということで、前田家は工芸品や芸能にお金を使うようになったそう。こうして九谷焼や輪島塗、能楽、茶道は発達していったのです。
『地元でお茶を作るべき』と前田家より製茶奨励政策が出されたことを機に、お茶作りを始めました。
 

「作る」から「仕入れ・加工・販売」へ


時代は変わり戦争が始まると、茶畑は芋畑や田んぼにどんどん変わっていったそうです。
茶畑って面積を取る割には、食べ物にならないんですよね。こうして石川県でお茶を作る農家は、ほとんどなくなってしまいました。
その状況を見て、丸八製茶場も“お茶を作ること”から“お茶を産地から仕入れ、加工し、販売する”形へと切り替えていきます。

 

茶の茎で作る「ほうじ茶」の誕生

お茶というのは、お茶の木の葉っぱを使って作られているのですが、葉っぱを傷つけてしまうとどんどん茶色くなっていくんです。
日本茶はそれまで葉を傷つけないことが良いものとされていたので、葉っぱを傷つけないためにも茎の部分から折っていたんですね。
もちろんお茶作りに使われるのは葉のみ。茎はたくさん余ってくるのですが、使い道もないため廃棄するか畑に戻すかしかありませんでした。
お茶の産地である京都や静岡などでは茎もお茶の一部と、「茎の緑茶」として販売されていたことを知り、石川県でもどうにかできないかと茶業者たちは考えたそうです。
そんな中、明治の中頃に、金沢の『はやしや』さんというお茶屋さんが、茎を焙煎したほうじ茶を考案したんです。日本で初めて「茎のほうじ茶」という商品が誕生した瞬間でした。

 

加賀国で作った棒茶=加賀棒茶

美味しいし安いと県内でも評判になり、一般の家庭内で飲むお茶として「ほうじ茶」は広がりを見せていきました。これが石川県全体がほうじ茶を飲む所以です。
こうして県内の茶業者はほうじ茶を作り出し、丸八製茶場も後発ながら作るようになっていきました。
各会社がいろいろな商品名で展開する中、「加賀国(かがのくに)で作った棒茶」から『加賀棒茶』という名前を付けました。

 

量産体制にシフトした高度成長期


高度成長期に差し掛かり、どの茶業者も効率的にお茶を売るため量産を図るべく、中国、台湾、ベトナムなどでお茶の茎を大量に仕入れ、ほうじ茶の製造・販売を開始しました。
丸八製茶場も以前は加賀温泉郷の旅館や国鉄を中心に卸していたのですが、数が増えていくスーパーマーケットに卸し先を変えたことで、売り上げは右肩上がりとなっていきました。
でも、急激な変化というのは長くは続かないものなんですよね…(笑)。

昭和50年代、スーパーは飽和状態となり、売り上げも一気に伸びなくなっていったわけです。
祖父と父はこの状況をどうしていいか分からない。そうこうしていたとき、食品の勉強会に参加することがさらなる転機のきっかけとなりました。

 

伝統的な製法と味を守る商品へ

食品の勉強会では「昨今、薬を使い原料の凹凸を均質化し、機械で精製することで効率良く商品を作ることが蔓延している。昔ながらの製法でしっかりと物を作っていた人が淘汰されていくことは危険ではないか」という考えのもと
「良い食品とは、伝統的な製法や味をしっかりと守るべき」ことを学びました。
そして丸八製茶場は、極力農家さんとコミュニケーションの取れた原料のみを使おうと決めたのでした。
それが一番消費者に向けて安全だ、と考えたからなんです。

もちろん原価は上がりますので、今までみたいに卸し向きの商品は作れなくなる。
じゃあマーケットを変えるしかない。
直販で納得いただいた消費者に買っていただこうという方向に切り替えていったんです。

 

昭和天皇に献上した加賀棒茶


昭和58年。昭和天皇が全国植樹祭で加賀温泉へ宿泊されました。
そこで宿泊された旅館と取引があった丸八製茶場へ『陛下のお茶を持って来て欲しい』という依頼が舞い込みました。

当時我々は一般的な茶業者なので、一番良いお茶というのはまずお抹茶だろうと考えました。
どのお茶を持って行こうかと検討したのですが、昭和天皇は80歳を超えられており、あまり刺激のあるものは飲めない。刺激のある抹茶をお出しすることはできないことがわかりました。
その際「陛下は白いご飯にうなぎの蒲焼を乗せて、ほうじ茶をかけて食べるのがお好きらしい」という情報を入手したことで「ほうじ茶なら飲めるのでは」と考え、新茶の茎だけを使った加賀棒茶を作ろうという発想が生まれました。

何度も試作を重ね、ようやく鹿児島から届いた新茶の茎を使ったほうじ茶が完成。
錫の缶に入れ、それを桐箱に入れて、表書きに「加賀棒茶」と書いて陛下へと献上しました。

のちに試作で残ったほうじ茶を同じように桐箱に入れ、県知事や議会の議長、加賀市長など7名の方に
「この度昭和天皇に献上させて頂いたお茶です。是非ご批評賜れば」という手紙を付けて配ったんです。
その時の表書きの『献上加賀棒茶』という名が、今我々のメイン商品となる献上加賀棒茶の誕生へと繋がっていったのです。




商品紹介
献上加賀棒茶 60g袋入 864円


一番摘みの良質な茎を浅く焙煎し、旨味を引き出した丸八製茶場を代表する商品「献上加賀棒茶」。余計な雑味を出さず芳ばしい香りを立たせるべく、熱湯を注いで25秒。軽やかな棒茶の味わいを存分にお楽しみいただけます。

新商品 
深炒り焙茶 BOTTO! 80g袋 648円


伝統的なお茶のイメージを刷新したデザインで登場した新商品「深炒り焙茶 BOTTO!」。素朴で大きく野性的な茶葉を強めに焙煎。熱湯を注いで30秒、ラフに入れても十分に力強くディープな味わいを感じられます。

▼献上加賀棒茶と深炒り焙茶 BOTTO! のご購入はコチラ
https://kaineya.jp/?pid=155502333

丸八製茶場
石川県加賀市動橋町タ1-8
0761-74-1557